スマイルエンジンの本を学生がデザインしました
March 11, 2013
こんにちは。
あの忘れもしない日、東日本大震災が起きた3月11日に、
東北芸術工科大学と山形大学が行ってきた震災ボランティアバスの活動記録『ぼくらのスマイルエンジン』が出版されます。
この本は全てボランティアメンバーが執筆し、デザインしています。
メンバーが実際に現地で体験して感じたこと、思いがこの一冊に詰め込まれています。
今日はデザインを担当したグラフィックデザイン学科の3年生4名、
茅原ゆきのさん、小泉遥果さん、早坂歩さん、五十嵐かんなさんに話を聞きました。
少し長くなりますが、彼女たちがどのような想いでこの本をデザインしたか、ご一読いただければ幸いです。
みなさんはスマイルエンジンの学生ボランティアなんですか?
「全員参加したことのあるメンバーで構成されています。やはり、現地に行ったことのある人ではないとデザインも出来ないと思いますし、見たものを伝えたいという思いもあって、
宮本武典先生にデザインチームの構成をお願いされた時に、この3人に声をかけました(茅原)」
ボランティアの経験からこの本に対する思い入れみたいなものはありますか?また、誰に向けて作ったのですか?
「全体としては後輩に向けて作りましたが、この活動があったこと自体、知っている人がどんどんいなくなっちゃうので、震災があった時に限らず何かしたいと思った時にこの本が励みになったらいいなと思います。メンバー自身、震災がなんだったのかっていうのを整理したい、分かりたいっていう葛藤もあってやり続けてきたので、そういう部分を読んだ人には知って欲しいです」
後輩はもちろん、色んな人に読んでもらいたいですね。
「そうですね。自分たちも読みたいです。ずっと一緒に走ってきた仲間が何を思っているのかを知りたかった。これを作る時に話し合いとか振り返りをみんなでやったんですけど、こんなに葛藤があったんだって、知らないことがたくさんありました。いままで自分の視点メインで走り続けてきたし、形を変えて(※)再スタートということなので、このタイミングで自分たちが何をやってきたのかを振り返るためにも作った意味があったと思います」
※今後スマイルエンジンは大型バスの運行を終了し、スマイルエンジンプラスとして乗用車にて被災地に向かい支援を続けます。
ではデザインについてお話を聞かせて下さい。
早坂さんはイラストを担当しましたね?印象に残っていることはありますか?
「今回イラストをやらせてもらって、みんなの思いに絵を乗せるところに責任を感じました。完成してほっとしています」
優しい感じのイラストがみんなの気持ちの暖かみを表現できているように感じます。
「私たちはデザインを終えて、やっとここから読めるっていう感じですが、内容と一番向き合ったのは早坂さんだと思います。
早坂さんが誰よりも先に原稿を読んでイラストを描いたんですね。
「みんなの気持ちを落とし込む作業なので一番しんどかったと思います」
ここでやったことが将来にも繋がっていくでしょうね。
早坂さんは前々から農業をやりたいって言ってましたが、それは震災の影響が大きいんですよね。
「早坂さんの原稿は泣けます。なんで農業をやりたいのかっていうのも分かる。読めて良かったです」
デザインを頼まれたのはいつですか?
「去年から話はあがってたんですけど、今年の1月からデザイン班は動き始めました。けっこうタイトなスケジュールで、実作業は2週間くらいで大変でした」
実際に出版されるものをまかされることで勉強になったのではないですか?
「大竹左紀斗先生からサポートしてもらったことで、エディトリアルデザインの実践的なやり方を直に学べました」
一番大変だったことは?
「デザインっていうより校正班とのやりとりが大変でした」
校正班とは?
「日本画の学生と山形大学の学生ですね。大竹先生から編集者をつけないと大変だとは言われていたのですが、編集者はつけない方向になりました。全体を動かしながら校正、編集やるっていうのは想像以上に大変で、編集者がいない状態でデザインすることの大変さを身にしみて感じました。でも学生だけでここまで出来ると思っていませんでした」
その編集長の代わりを茅原さんが担ってきたのでは?
「一応中心になって連絡を取り合ったりしていましたが、みんなで同じ気持ちを持って進めてきたから完成に至ったのだと思います。スムーズではなかったかも知れないけれど、なんとか間に合いました」
こんな大変な仕事を達成できたのは、みんなのチームワークの良さだったのだと思います。
「ありがとうございます。でも大竹先生のお力がなければ厳しかったと思います」
先生にお願い出来ることも大切な判断だったと思いますよ。
「自分たちが色んな人に知って欲しいっていう内容だったからこそ、ですね。メンバー以外にも色んな人が助けてくれました。毎日同学年の救世主がPC室に来てくれました」
今後スマイルエンジンはスマイルエンジン+(プラス)になりますね。
「バスだと一般の方も巻き込んでやっていくので、日帰りは必須なので作業を終えられないこともあり、途中で区切りをつけて帰ることが以前は多かったのですが、プラスに変わって人数も減った工場一軒を責任持って最後まで綺麗にすることが出来て、2年ぶりに工場再開することが決まりました。最初はどう学生と接したらいいのか分からない感じでしたが、最後はここが何の工場だったとか、震災からどういう状況だったかという話を写真を見せながら語ってくれました。スマイルエンジンプラスになることで、今まで出来なかった部分がこれから出来るんだなって思えて嬉しかったです」
3.11を忘れないために、ぜひ『ぼくらのスマイルエンジン』を読んでみて下さい。若者の視点から震災への問いかけが見えてきます。
『ぼくらのスマイルエンジン 東日本大震災 学生ボランティアバスの記録』
スマイルエンジン山形:著
福興会議:編
山形大学出版会