GIFT 総まとめ!
June 09, 2009
全教員のコメントがそろいましたので、ここにすべてまとめました。
先生方の熱意のこもったコメントです。
よーく読んで下さいね。きっとこれからの制作の力やヒントになるはすです。
それではどうぞ!
G-1 最終プレゼン総評/中山
G-1グランプリについて
グラフィックデザイン学科初の「学年縦断」グループワークでしたが、大成功だったと思います。
記念すべき第一回だったので、学生のみなさんも我々と同様に戸惑う事もあったと思いますが、コンペ形式にしたことで、一次審査シートから大変白熱し、レベルもまあまあなところに落ち着いたので、まずはホッとしています。これからみなさんが出てゆくクリエイティブの世界というものは、おおむねグループワークです。クリエイティブ業界に限らず、社会そのものが大小のグループワークの集合体であるとも言えます。各学年レベルでのグループワークは通常授業において展開されますが、実力も経験も世代も違う人々が集って、同じテーマで一つの作品を作るという今回の形式のほうが、現実社会のモデルとしてはリアルなのです。春の忙しい時期に少々無茶な日程ですが、来年は賞品総額も増やし、審査も厳しくしつつ、よりパワーアップさせたいと思います。1年生は入学数ヶ月ですでに多くの先輩と知り合う事ができました。4年生は大事な事を後輩に残してくれたはずです。来年も基本的には同じメンバーに、新1年生を加えたグループ構成で考えていますので、みなさんで交流を深めておいてください。
コンペ応募について
どのチームにもそれなりに面白いアイデアが見られましたが、コンペという形式で考えると、こちらが親身になって丁寧に読み解いてあげない限り、一目で落選という難解な一次シートもいくつかありました。今回は皆一生懸命にいいところを探そうと読んでみましたが、毎回こうはいきません。
今一度コンペの応募要項を思い出して下さい。どんなコンペも応募要項をよく読めば応え方がわかるものです。
主催者側が何を欲しがっているかはたいていそこに書いてあります。
G-1の審査の機会は2回です。一次審査シートが通過すれば最終プレゼンです。多くのチームが犯していたミスは、最終プレゼンで見せる作品を単に説明しすぎて、こちらの想像を限定してしまっていたことです。自分が審査員だったら?と想像してみてください。どうなるんだろう?ぜひ実物が見てみたい、展開が楽しみ、という期待感がなければ狭き門は通過させられないでしょう?審査モノというのは総じてそういう事です。
客観的に自分たちの提案がどう他人に映るか?という目線を外してはいけません。グループ内の誰か一人(上級学年が適当か?)でも自分達の制作をきちんと疑っていれば、もっと良くなったという提案はたくさんありました。
また、プレゼンシートは一目でやりたいことが伝わるものであってほしいです。はじめの一言が伝わった上で、こちらが知りたい細部をガイドしていてくれれば、あとは想像を楽しみます。
就職活動におけるプレゼンテーションや面接試験も同じです。まずは期待をさせる、そしてその期待に応えるための実力の所在(就活の場合は過去作品のポートフォリオ/コンペの場合は裏付けになるビジュアルや試作モデルの提示)を、何らかの形で見せることが必須なのです。
課題「GIFT」について
多彩なアプローチが見たくて考案されたお題目でした。そういう狙いも課題から見抜いて欲しいのですが、似た案がとても多くて残念でした。1年生はまだ分からないと思いますが、通常の演習で各教員がみなさんに話している事を思い出してください。
我々TUADのグラフィックは常にアプローチのなかにおいて、実験的な試みや精神を要求しています。ありきたりで安全な案というものは全く期待していません。「GIFT」という題目を、グループ内でどれだけ多角的に分析し、あらゆる方向からボールを投げてみたかが重要です。日常では「プレゼント」や「贈る」という行為を指しますが、こんな「GIFT」という考え方があってもいいのではないか?というもっと概念的で、スケールの大きな解釈が沢山出ることを期待していました。現実的にお店で売られそうな「GIFT」ばかりでは、こちらも実現性ばかりを重視した審査になってしまいます。製品化を狙ったコンペやプレゼンではなかったのですから、自分たちのフィールドを限定してしまったのは皆さん自身だったようです。次回に期待します。
TUAD GD学科長 中山ダイスケ
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05班 『ふっとほっと』
- 付箋の実例は工夫に富んでいて、プレゼンテーションは良かったです。日頃のちょっとしたやりとりに「GIft」を見いだした点は面白いと思いましたが、絵柄付きの付箋に見慣れていることで、プロダクツそのものにそれほど新しさが見えませんでした。課題をどう捉えるか?という点では、こういったクスっとできる日常アイデアは嬉しかったのですが、実際に街のファンシーショップや、ギフトショップなどでもこういったアイデア付箋はみかけられます。この発想を起点に、もっと違ったアプローチを見せて欲しかったというのが正直な感想です。(中山)
- 派手さはないけど、取り組みが真面目で好感が持てる。類似した商品がすでに市販されているので、アイディアの飛躍があると良かった。「ギフトはコミュニケーションだ」という発想はとても良い。(田中)
- お父さんへの思いやり付箋などは、ホロッときそうですが、問題は二回目以降でしょう、ルーチン化してかえって逆効果になったりして。とはいえ冊子のイ ラストには安らぎを覚えました。(近藤)
- バリエーションはあるが、半径5メートル以内での思考。ギフトとは離れる。冊子のイラストとてもよい。(大竹)
- 現状のポストイットの応用系だが、イラストのポップさが「やわらかいコミニュケーション」を促していて好印象。照れ隠しの緩衝剤として「ふっとほっと」が機能していた。(坂東)
- さりげない思いやりが伝わる。これは使い捨てなのでしょうか?
相手の気持ちは残したいものです。後のシールの展開が欠けていました。(澤口)
- 冊子のイラストと提案とがピッタリあっていて、とても好感がもてました。付箋自体の目新しさは無いのですが、使い方の新しい提案として、日常のコミュニケーションに楽しい広がりが生まれる可能性を感じました。(多田)
07班 『もぐもくん』
- リサイクルというテーマや、プレゼン時の作り込みは評価したかったですが、いかんせん「もぐもくん」のビジュアルが不快すぎて、コンセプトの神髄まで見えてきませんでした。パブリックに展開するキャラクターのデザインはある程度慎重に生みだされなければなりません。あの場にいた審査員全員に「生理的に受けつけない」と言われている時点で、失敗の原因は明らかだと思いました。せっかくのグループワークだったので、誰か一人でも冷静に客観視できれば、1年生からの奇妙なデザインはもっと洗練されたはずです。上級生のディレクションの責任は大きいと思います。「キモかわいい」「ゆるキャラ」「ヘタウマ」は本当にうまい人が作るのです。たとえうまくなくても、客観性を持ってリサーチに時間をかければ、ある程度のレベルまではいけるはずです。(中山)
- リサイクルは日頃から語られているテーマなので、もっと違う目線、価値観から発想する必要がある。スケールの大きさも欲しい。
「もぐもぐくん」が不気味だったのが残念。力の入れどころをちょっと間違っちゃったかな。(田中)
- リサイクルは「未来へのGIFT」という展開になるのかと思ったら、「もぐもくん」になっていました。これだと顔キャラが強烈すぎて、大切なシステムを反射的に「好き、嫌い」の感情レベルの問題に押し下げてしまいますよ。(近藤)
- 内輪ウケで終わっている。エコとかいいながら、日本中にまた変なものが増えるのは矛盾。(大竹)
- もぐもくんのビジュアルは誰が見ても「バッド・デザイン」。単なるネタに走り過ぎましたね。パブリックな目的なだけに、趣味性とは相容れなかった。違う課題だと、ぎりぎりオーケーか?やはり駄目なのか?よく反省してみて下さい。(坂東)
- もぐもぐくんの顔のデザインは何とかならなかったのかな。このデザインが面白いと思うのはちっと幼稚。(澤口)
- コンセプトに対して、本当にこの形が完成形で良かったのでしょうか?インパクトが強過ぎて、システムの詳細まで頭に入らなかったのはとても残念です。公共で使用されるものほど、冷静に客観視して制作することを意識しましょうね。(多田)
- 日頃のちょっとしたやりとりに使える、一片のお菓子プラス名刺という発想は、05班のアイデアと同様に微笑ましい心のやりとりだと思います。狙いが不明瞭になったのは、いろいろと作りすぎてしまったことかもしれません。ガムやチョコレートのパッケージを丸ごとデザインし直したようなものが沢山ありましたが、例えばKITCUTなどの適当なチョコレート菓子のパッケージを題材に、皆さんが見慣れたパッケージの一部がメモに使える空欄になっているような「ひと味加える」程度の提案の方が、多くの人に伝わりやすかったのかもしれません。「名刺」にこだわったことで、自己紹介を重要ミッションとした情報のやりとりが強調されて、お菓子のパッケージデザインが主役になり、日頃のやりとりにお菓子を添えるという本来の意味が薄まってしまった気がします。発案の際に、名刺とお菓子のどちらを重要視したのかはわかりませんが。(中山)
- 現実的ではないアイディアだけど、やるならもっとシャレっ気を利かせた方が良かった。名刺よりもコミュニケーションツールとして、とらえた方が発想は広がったように思う。(田中)
- 個人的に甘いものは好きで、釣られる立場にあるので、かえって疑心暗鬼にかられそうです。お菓子がうれしいのは、やっぱり二度目からでしょう。名刺は基本的には初対面のビジネスツールなので、そこに少なからず疑問を感じます。(近藤)
- 発想がお友達感覚。『お菓子→おいしい→みんな好き』的な発想は、あまりに浅い。(大竹)
- 企業と組んでお菓子のパッケージをオープンソースにするところは評価できますが、ポイ捨てされてしまう危険性も孕んでいます。(坂東)
- こんな名刺があったら楽しい、しかし捨ててしまう可能性がある。名刺としての機能はなくなってしまう。(澤口)
- 印刷された紹介内容に気づかずに、普通に食べてしまいそうな印象を受けました。名刺プラスαの提案であれば、お菓子だけにとらわれる必用もないのでは?「気軽さ=お菓子」にこだわるのなら、更にもう一展開楽しい提案が欲しかったです。(多田)
11班 『小さな幸せprj.』
- 結局のところ、日頃のやりとりをネットに連れて行ってしまう発想が、よく言えば今風ですが、そこをあえて温度の感じられるコミュニケーションにキープして欲しかった。広告に多く見られる「続きはWEBで!」という発想は、キャンペーンの深みを時間無制限の無料フィールドに持ち込もうという意図よりも、企画側が反応を数値化したいという冷たい意図に使われている場合が多く、11班の温かな発想の行き先としては方向違いだと感じました。日常で、突然シンプルな葉っぱのカードが貼られていると、それだけでもなんだか気持ちが和むと思うので、その和みの「質感」を、うまく共有できる方法は他にもあったのではないかと思います。とても惜しかったです。(中山)
- カードを置く場所をもっとこだわると、面白くなったかも知れない。ネット掲示板との違いをもっとはっきりと出せると良かった。(田中)
- 昔からラジオのパーソナリティーが読むのは、ハガキに書かれた「小さな幸せ」的なお便りです。ハガキ大のカードに描かれたQRコードはそこからの発想でしょうか。実際は大勢なのに、とても個人的な印象を受けるところは、 GIFTとして眼のつけどころですが、それがいたるところに置かれていると、お仕着せがましくなりませんか。(近藤)
- 『モノ』から離れての発想に好感。しかし、世の中は善人ばかりという前提が不安。(大竹)
- パッと見たビジュアルには期待があったのですが、文字が読みづらく葉っぱとの関連性も直感的でないところがやや弱かった。エピソードがすんなりと頭に入らなかった点も残念。でも改善すれば良くなりそうです。(坂東)
- 思いやりと優しさが感じられたがどこか普通に見えてしまったのが残念。
最終展示の工夫次第で見え方が変わる可能性はある。(澤口)
- コ ンセプトは好きですが、「葉っぱがキレイなカード」という印象しか残らないのは残念。「贈り物のエピソード」はそれぞれに想いも情景も全く違うはず。どの カードも同じように見えてしまっては、エピソードの感動は瞬時に伝わりません。伝わらなければ企画自体が成り立たないので、もう少しその部分を膨らませて 最終形体に落とし込めると良かったですね。(多田)
13班 『Outside gift』
- 実現性と、夢のコンセプトの狭間でゆれた提案だったと思います。贈り物の箱の中身と外身の意味を逆転させるという奇抜な発想が面白かったのですが、制作段階で少々発展しすぎて、使える外身、中身のための外身、、、、と無制限に変容しすぎた感じがします。プレゼンテーションの作り方は上手でしたが、クライマックスが「焼き芋」では、結局リサイクルネタのようにも見えてしまいました。焼き芋は今回は余計なアイデアだった気がします。箱の外身がそもそも「気持ち」で、中身は空っぽでも通じるプレゼントというものを見せてくれていたならば、意味的にもデザイン的にもグランプリに値した提案になりえたと感じました。(中山)
- あまり実用性を持たせると、つまらなくなってしまう。「外側」と「内側(ギフト)」の関連性がおもしろさだと思うから、そこにもう少し工夫が欲しかった。キューブ型にする必要はないのでは。(田中)
- 内側が外側という発想は好きです。ただし、GIFTボックスのことを考えると、 本来は中に何が入っているか、ちょっとわからない期待と驚きがポイントでし ょう。これだと、外から見て内容がわかってしまう可能性が高いこと、よっぽ ど哲学的なものでない限り、中が空というのが許されないことが問題です。このハードルを越えることがむずかしかったようですね。レゴそのものだったり、中に亀がいたりして、破綻していました。(近藤)
- デザイン優等生の落とし穴にはまっている。世の中、世界を見よう! はがきセットはとてもよいが、改行の位置、丁寧に!(大竹)
- プレゼンテーションは上手でした、、が、根本的な問題として、照準が演し物(だしもの)で終わった印象。実際の運用までのイメージがリアルに想像できなかっ た。亀とか出てくると、もうネタ合戦という感じになってしまいます。ただ、箱をギフトのメインにしたところが、コロンブスの卵的でユニークでした。(坂東)
- 箱がギフトという発想は面白い。故に中身が果たして必要になのだろうか?
箱だけにこだわってみても良かった気する。(澤口)
- ゴミが出ないことは、ラッピングの視点からみると理想的な提案です。ハガキのカタログ形体も、統一されたBox形体もとても良かったのですが、よりリアリティのある商品内容だと更によかったですね。焼き芋がとにかく美味しかった!ごちそうさまでした。(多田)
18班 『白い風船』
- みんなで風船を割るというパフォーマンスにはワクワクしましたが、想像したほど「香り」がもたらす何かは感じられませんでした。コンセプトモデルとして、こういった現実からはかけ離れた概念的なアイデアは大歓迎なのですが、コンセプトモデルであればあるほど、提案者のワクワクした夢に、観客をのせてしまわなければなりません。風船を準備し、会場に配り、一斉に割るという段取りの成功に、メンバーが観客と同じレベルでホッとしていた事が決定的にマズいでしょう。割った後に今一度会場を盛り上げて、巻き込んでドキドキさせて欲しかったです。(中山)
- 「香り」に着目したことはおもしろい。が、そこから先の詰めが足りない。香りの入れ物が風船で良かったのか。風船である必要の説得力がもっと欲しい。(田中)
- GIFTの特徴として、想い出を贈るという側面があると思います。物で想い出を定着させていくわけです。それを逆手にとって、記憶と直結する「香り」そのものをメインにしたまでは良かったのですが、風船割るのはちょっと刺激的すぎました。別の意味で、不快刺激もかなり記憶に残りやすいものなのです。(近藤)
- 発表はおもしろかったが、あそこからもっと突っ込めた。プレゼントの一番のポイントは開封の瞬間だろうか。(大竹)
- 変化球系でしたね。肝心の匂いそのものに、もっとバリエーションがあったり、事前にリクエストできるシステムがあったりしたら、もうすこし双方向コミュニケーションとしての広がりも出たのかもしれません。(坂東)
- プレゼンテーション上手でした。五感を刺激する発想はよかった、風船を割った後さらにサプライズがあるといい。(澤口)
- 「贈り 物=モノ」からはなれた考え方に、とても好感がもてました。風船を割るまでの気持ち(緊張感や期待感)、更に割った後の余韻を香りで例えたところはなるほ どと感じましたが、割る瞬間の予想以上の恐怖感は、私にとってはちょっとギフトから遠いように感じてしまいました。(多田)
23班 『トロイメライ』(銅賞)
- ごく限られた関係でこそ成立するコミュニケーションだったことが良かったのだと思います。贈られた高齢者が、あまりルールに縛られないようにという気遣いも見え、お気軽なスクラップブック作りの入門編のような形に見えたので、アイデアと実現性のバランスも良かったと思います。ただブックのデザインが、あまりにも若者目線での「老人デザイン」になってしまっていたので、そこに関しては、もう少し贈る側の若者からの思いを、たとえ高齢者が少々照れてしまっても「ちょっと派手だけど、孫にもらってねえ、、、」と、周囲に自慢したくなるような生き生きとしたデザインを提案するべきだったと思います。(中山)
- 贈る側が想いを継続していかなきゃだめという視点はとても良い。デザインがだめ。お年寄りに贈るからという既成概念を取り払って、もっとウイットに富んだデザインを考えて欲しい。(田中)
- 一般的に歳を重ね、高齢になるということは、几帳面というベクトルとは逆のような気がします。この場合、スクラップブックはキチンとルールだてて整理されていくことで価値が上がるのではなくて、ルーズに雑になりながら美しくなっていくような、そんな仕掛けを持っていれば、もっと良かったと思います。いずれにせよ、年配の方には素敵なGIFTになりますね。(近藤)
- 優しさは評価できるが、デザインとしては完成度が低い。(大竹)
- 素直でストレートな動機に打たれました。ビジュアル的にぬるいのが残念なところ。年配の方にも、洗練されたグラフィックを提供して良いのでは?送り手の手間がかかるところもポイントですね。忙しい現代人にはちょっとハードル高めですが、これは新しいと思いました。(坂東)
- 着眼点はよい、巧くデザインに落とし込めなかったのが残念。(澤口)
- 贈る相手が明確で、コンセプトもとても好きな作品です。贈る相手の好みや年齢の幅を考慮したビジュアルデザインの提案ができると更に良かったですね。ギフトの一番大切な「暖かさ」を感じた作品でした。(多田)
24班 『TAMAMORI』
- 一次審査のプレゼンシートを見ながら半信半疑でしたが、最終プレゼンに期待してみました。プレゼンテーションはなかなか面白く、楽しめましたが「GIFT」という観点から考えれば、ちょっと気持ちの悪い方にシフトしすぎて、一次審査シートには見られた「ユーモア」が消失していました。これは相当の変わり者か、どこかの部族の人しか喜ばないギフトでしょうね。発想されたアイデアは、制作に至る過程で、また制作からフィニッシュの過程で、時々何度も立ち止まって客観視しなければなりません。いつも疑っているぐらいでいいのです。07班へのコメントと同じく、「キモかわいい」などの、ぎりぎりの感覚に訴えるものほど、ごく慎重に進行を見極めてください。個人的な欲を言えば、もっともっと20ヶ国ぐらいの生首も見てみたかったですが。(中山)
- アイディアシートでは面白そうな期待があったけど、プレゼンではそれ以上の発展がなかった。入れ物という発想を一度壊して、違う目線で考えてみると、思わぬ発展がありそうな予感もあった。(田中)
- これが銀の盆にのっていたら「サロメ」の生首ですよ。説明を聞いていると、 細部は良くできているのですが、あまりに真面目に取り組みすぎてしまって、 何か見失っているようにように思います。殺意や差別を連想させる物は、もっと注意深く扱ってください。もしくは最大限のユーモアを持って。(近藤)
- グローバルという発想はいいが、幼い。エコとか持ち出さずに、馬鹿っぽくやりきってほしかった。(大竹)
- もっ とポップな仕上がりかとも思っていたのですが、思いのほかリアルでグロテスクでした。検証作業では、家族や友人からのストレートな意見を聞く事も大事です よ。完成度があがると、益々グロテスク度がアップするという問題を、ユーモアで回避する方法はなかったのでしょうか?個人的にも、「変態な視点」は何かを クリエートする際のファクターでもあるとは思うのですが、さじ加減がポイントです。(坂東)
- コンセプトのユニークさよりも、ビジュアルの「怖さ」が先にきてしまいました。ここまでのリアリティは必用ないのでは?形体も、構造も、中のギフトへたどり着くまでの行程も、出来るだけシンプルにしていけると良かったように思います。(多田)
26班 『Laughramer』
- アイデアもプレゼンテーションもトーンが揃っていて好感が持てました。フレームの写真も楽しく、いろいろな局面に使えそうで「おもしろデザインプロダクツ」という完成度はあったでしょう。ここに、「GIFT」という意味とこだわりが加わってくれれば、もっと強くなったはずです。想像力に働きかけるという発想は、相手をその気にさせないと成立しません。オノヨーコの過去の作品に「グレープフルーツ」という本があるのですが、その本には「地球が回る音を聴きなさい」「雲を数えなさい。雲に名前をつけなさい」などという指示が淡々と書いてあり、観客がその指示にしたがうことで作品が完成します。「インストラクション(指示)・アート」と呼ばれていましたが、「指示」と言い切る事で相手をその気にさせてしまう言葉の強さがキモでした。時には少々押し付けることがあっても、その先に楽しい想像ゲームが待っていればOKだと思います。(中山)
- 贈られた人のイマジネーションを広げるという発想は面白い。でも、プレゼンで発表したものは、逆に狭い世界で終わってしまっている。見方やその周りの状況で、どんどん見え方が変化していくものを考え付いたら、とても面白くなりそう。(田中)
- カードの真ん中に穴があけられ、「そこから空を見上げて下さい」というふうに書かれた有名な美術作品を思い出しました。この場合、GIFTのコンテンツはそれを見る人の想像力の中に生じることになるのですが、「Laughramer」だと、フレームと風景との関係が見たまますぎて、ちょっと簡単すぎる気がします。もう少し詩的な拡がりを持つようにしないと、すぐに飽きられてしまいますよ。(近藤)
- おやじ雑誌の『妄想写真館』を思い出した。ギフトとは離れる。(大竹)
- ア イデアそのものはいいのですが、見せ方がうまくない。限られた時間の中で制作したのは理解できますが、サンプル画像がいかにも即席に見えて残念。一般の人 を巻き込んで、もっとバリエーションがある展開があればかなり良くなると思います。手間をかけるとそれだけで説得力も増します。(坂東)
- 雑誌の付録的イメージ。ギフトの付録?本ギフトではない気がした。(澤口)
- 使う人のセンスや発想力がとわれる楽しい作品です。日常にほんのり笑いが生まれるアイデアはとても好きです。肝心のモチーフが残念。限定的で広がりがないので、もっと遊び心のある、自由に空想を広げていける内容だと良かったですね。(多田)
29班 『お! project』(グランプリ)
- やりきった感が満載で好感が持てました。たしかに使うために捨てる「部分」がこんなにあるんだなあという事にも気づかされまし
た。一次審査シート、完成度、プレゼンテーションと、3拍子揃っていましたが、「GIFT」というテーマとの整合性は最後まで議論になりました。無感情に
捨てられてゆくもの達へ「捧げる」GIFTなのか、そういったものへのささやかな愛情を、皆で共有することで「GIFT」を考えてみようという禅問答的な
29班の回答なのか???そのあたりをきちんと強く意思表明して欲しかったです。「お、チョウザメだ」という部分を思い出すと、今でも笑えます。ユーモア
に品があった事が勝因なのかもしれませんね。グランプリおめでとう。(中山)
- プレゼンも含めて作りが丁寧で良い。アイディアを魅力的に見せていた。リアリティを感じる。ただ、単なるおまけ的なスケールに終わってしまうと、つまらない。(田中)
- GIFTの喜びの中には、私だけの...、と思わせるごくパーソナルで密やかな喜びがあります。「お! project」は「お!」というささやかな発見の部分の眼のつけどころは良いのですが、それを「project」として謳ってしまうところ に、少し矛盾を感じます。プレゼンはスケールを大きそうに見せた方が見栄えはしますが、この場合、実際はむしろそこを隠すような展開を工夫しなければ ...。(近藤)
- バリエーション豊富なのは、さすが。でも、小粒。冊子よくできている。(大竹)
- プロダクトの隙間に、このような「いたづら」を仕掛ける感覚は好きです。実際に企業にアプローチする方法等をマーケティング的に分析していましたが、もっと シンプルに、アイデアそのものが人の日常にどのように波及するかを見せてくれた方が、リアリティが増したように思います。ただ、ボリューム的にもアイデア的にも、バランスがとれていた事が評価ポイントです。(坂東)
- お!素晴らしい。もっとスケール大きいおおお!も見てみたい。(澤口)
- プレゼン、チームワークの良さが際立ちました。ひとつひとつの内容に関しては少し浅く感じた部分もありますが、提案数と冊子の作り込みはとても良かったです。何よりチームみんなが楽しんでいるのが伝わってきて、気持ちのいいプレゼンでした。(多田)
31班 『天下』(銅賞)
- この班もやりきっていましたね。プロダクツ1点で勝負という離れ業に挑戦したわけですが、期待を裏切らない作りが魅力でした。また、ユーモアを失っていな
かった点も高評価です。凝ったプレゼンテーションにも照れがなく、楽しい事を楽しく伝えるという大切な事をやりきってくれたことは、立派なデザインワーク
だと思います。難を言えば、日本文化の捉え方がアメリカンなほど薄く、世界を知らないチープな外国人目線での日本文化だったので、海外CM風のプレゼンが
セットでなければ成立しなかったでしょう。最終プレゼンで全体のコンビネーションを見る事ができましたが、今考えると、一次審査シートの出来次第では、単
なる安いジョークだと勘違いされて、最終にたどり着けなかった可能性もありますね。チーム全体で、よどみなく勝負に出たことが勝因でしょうか。とてもいいチームでした。(中山)
- アイディアそのものは特別秀でているわけではないけど、取り組み方の姿勢は真面目そのもの。プレゼン方法、サンプルの作りも秀逸。あの一見ばからしいアイディアで、チームをまとめあげ、プレゼンまでチームを引っ張れてこれたリーダーの力を評価したい。(田中)
- これって、明らかに殿様、暗殺してますよ。発想と造形にはインパクトありますが、個人的には頭に刺さっているのが穴あき包丁のところがちょっと気に入り ません。ここは日本刀の流れを汲む、焼きのはいった和包丁でなければ...。 『梅ぼしと日本刀』ではないけれど、そこに少し文化的な含みがないと、単なる自虐的な一発ギャグに終始してしまいます。それにしても、日本土産のくせに、絶対に手荷物で飛行機乗れないのはいいんでしょうか。(近藤)
- プラン通りにやりきったのがエライ! プレゼン楽しかった。ある材料を最大限に活用している。(大竹)
- ユーモア、ウィット、ペーソス、、、こんな言葉が思い浮かびます。ナレーションも秀逸。エンターテイメントになっていた所が大変良かった。しかし、、、プレゼ ンのためのプレゼンという罠にハマっているところも。プロダクトの抽象化がなかなか上手です。(包丁を納めるときに怪我しそうなのがちょっと心配ですが、、)(坂東)
- プレゼン勝ち。プレゼンテーションを工夫すれば人を楽しく説得させられる。よい参考例を示してくれませした。(澤口)
- プレゼンにアッパレ賞でした。商品自体もよくデザインされていたと思います。バランスのいいチームですね。これを人に贈りたいかと言われると、、、冷静に判断しますが、とても好きな作品です。(多田)
04班 『ぎ封筒』
- 一次審査シートが大変面白かったので、審査員もみんなとても期待していたのですが、シートそのままのプレゼンすぎて、発展が感じられなかったのが残念でした。駄洒落「ぎ封筒」を照れずにやりきっていたことには好感を持てましたが、作ったものが市販のデザイン封筒のレベルを超えていなかったことで、あまり売
れそうにない中途半端な封筒商品になってしまったのではないでしょうか。ベースにした茶封筒が狙いだったのか、それともアイデア切れで仕方なく使ったものだったのかも不明で、パロディーの方向と強さが曖昧になってしまったのかもしれませんね。(中山)
- 言葉遊びで終わってしまっているところが残念。使い方にもっと工夫が欲しい。郵便番号の枠は不要。(田中)
- 考えてみれば祝電とか弔電とか、いまだにお世話になることがあります。「ぎ封筒」を見ていると、むしろ実際に手にとって選べない場合のGIFTのありかたを考えさせられました。用途が比較的はっきりしていて急いでいる、それもネットなどで選んで贈る目録や商品券の場合、重要なのは記号的なやりとりをいかに無味乾燥なものにしないかです。そんなところに焦点を当て直せば、意外 と道は開けるかもしれません。(近藤)
- 全部同じクラフト封筒が退屈で、しかも美しくない。楽しさも伝わってこない。(大竹)
- 仕上がりのステーショナリーが普通すぎ。もっと洗練されたステーショナリーを、図書館等でリサーチして勉強して下さい。アイデアは悪くないので、「HOW=どのように」表現するかが決定的に欠けていました。(坂東)
- 既存のクラフト封筒を展開する発想なのか、新しい封筒の提案なのかが曖昧でした。
最終プレゼンに残った中ではいささか普通に見えてしまった。(澤口)
- アイデアは好きですが、なぜ全てをクラフト封筒にしたのでしょう?デザインよりも「茶封筒」の印象が強く残り、中に入れる贈りモノとのギャップも大きいように感じられました。表面のデザインが提案のメインになっているのなら、まずはデザイン美しく見せるための色、質感、中のギフトとのリンクなどなど、もう一度振り返ってみれると良かったですね。(多田)
16班 『シナプス』(銀賞)
- 唯一の映像作品の提案ということで、プレゼンシートは???でしたが、期待して一次を通過させてみました。映像作品の出来については、この時間を考えるとま ずまずの出来。GIFTの説明ではなく概念をコマ撮りアニメにしている点は、応募作の中でも際立って個性的でした。グループワークという強みも発揮され、 相当な枚数の原画を描ききった制作能力は高く評価したいと思います。今一度、時間とリズムを練り直して、再編集したものを作って欲しいです。うまく出来た ら、来年の応募タイトルに使ってみたいです。映像に仕上げるという過程では、ぼんやりと抽象的な空気感や世界観を、チームの全員が長く辛い作業時間中、共 有し続けなければいけないという忍耐力が問われます。リーダーとメンバー全員の力がうまく結集できたようですね。(中山)
- 「物」を表現したチームが多い中、ギフトという想いそのものをアニメーションで表現した「発想の柔軟さ」が良かった。コマ撮りという手作業とチームワークが結びついて、ほのぼのとした思いがうまく伝わってきた。(田中)
- このタイトルを聞いたとき、最初はヘッドギアとかカプセルとか、もう少しアブナイ形で脳に直接贈る物かと勘違いしてしまいました。物を介さず、その情報と感覚だけをダイレクトに交換する世界がいずれ訪れ、そこでデザイナーは ...、いけない妄想が現実を浮き彫りにする事もあります。発表内容は少し違いましたが、いずれにせよ、GIFTを単なる物ではなく、概念として取り組もうとする姿には好感持てました。(近藤)
- いろいろ発想が刺激され広がる映像がすばらしかった。みんなでの協同作業が感じられたのも、とてもgood!(大竹)
- 非常に抽象的で、やや禁じ手なところもあるのですが引き込まれた映像です。具体的に伝える手法を選ばなかった事で、含みのある表現になりましたね。ただ、こ の方向でもっと洗練された強い表現の作品が出てきた際には、もっと強度が必要でしょう。今回の全体の傾向の中で、アニメーションが目立った点もプラス評価 につながりました。心模様を静かに伝えるアプローチが素敵でしたよ。(坂東)
- 音が欲しかった。もう少し計画的に制作すればもっと精度の高いギフトになったと思う。(澤口)
- 「ギフト」のもついろいろな側面や含みが、気持ちよく心地よく伝わってきました。色鉛筆の柔らかいタッチと繊細な表現が、テーマにとても合っていましたね。チームとして、作品を作るまでの過程や役割がプレゼンから伝わると更に良かったかなと思いました。(多田)