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- 東北芸術工科大学 デザイン工学部
グラフィックデザイン学科 - Tohoku University of Art and Design
Department of Graphic Design
明けましておめでとうございます!
本年もグラフィックデザイン学科をどうぞよろしくお願いします。
年を越してしまったのですが、今日は先月開催された横山裕一展の様子をお伝えします!
文字ばかりで申し訳ありませんが、トークに来られなかった方にも少しでも伝わるように編集しましたのでご一読ください。
下の方には新しい試みとして学生の感想を載せています。
今回は3年生の筒井萌さんにお願いしました :-)
さて当日ですが、展示会場であるギャラリーBは横山裕一ファンで満席になり、
立見のお客様もいらっしゃるほどでした(寒いところ申し訳ありませんでした...)。
予備校時代の友人でもある原高史グラフィックデザイン学科准教授が聞き手となり、横山さんの頭の中を探っていきます。
横山さんのこの世界観はどうして作られているのか、
その謎も、トークの中で少し垣間見えてきました。
たくさん面白いお話はあったのですが、その中から少しご紹介します。
今の表現に辿り着いた理由は?
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お金がないからいかに材料代を安く広い面積を塗れるかということを研究していました。キャンバスを使わないようになり、油絵の具を使わないようになり、立体的な描写をやめて記号みたいになっていきました。西洋美術は暑苦しくて、東洋人がものを描く上でそういったものに不自然さを感じた時に浮世絵のような表現に影響を受けました。西洋的にみるとパースが狂っている。奥行きを否定した世界。こうすることで人間くささを消すことができる。人間の視点ではないような。ここに憧れて初期のペンキ画みたいなことになっていくわけです。人間が描いているようにはしたくない。新しいものにしたかったです。セザンヌは描いているおじさんが裸で抱きついてくるようなイメージがあります。
横山さんはほとんどの線を定規で引いているとのことで、実際に見せていただきました!
目の曲線すらも定規で引いていたそうです!
趣味は遠足とのこと。誰と行くのですか?
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一人だね。今日は作業出来ないという日がたまにあって、早朝から起きて乗ったこと無い電車に乗って、降りたことの無いところで降りるのね。降りて、景色見て、格好いい方に行くの。交差点きたらまた格好いいところへ進む。ルールがあって、戻ることは許されない。右いって右いったら戻っちゃうからね。訳分かんないところにいっちゃったり戻っちゃったり。遠足に適した土地と適さない土地があるね。横浜は山ばっかりで歩くとこが限られていて自由がない。名古屋と静岡はいいよ。一直線でどこまでも行けるからね。東京はだめね。皇居に当たっちゃう。最高記録は8万歩かな。58キロくらいあるいて足が棒のようになったね。
イラストの世界から漫画に入って来たあたりをもう少し詳しく教えて下さい。
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昔はファインアートを目指していたので、イラストのように残りもしない絵を仕事で描くことが寂しいなぁと思ってね。いつか残るものを作りたいと思って。たとえばドストエフスキーの小説は何百年経っても残っているけど、その小説にどんな挿絵がついていたかなんて誰も問題にもしないし、むなしいもの。イラストでは主役になれないんでね。
横山さんの独特の世界観はこうして生み出されていたのですね!
トークの中で印象的だったのは、「始まりと終わりを決めているのは人間だけ、自然界には始まりも終わりも無い。漫画でそれを表現したかった」という言葉です。
トーク終了後の質問タイムで質問してくれたお客様には、質問カードに絵を描いて返して下さいました...!サービス精神が旺盛な横山さんです。
横山さん、楽しく刺激的な時間を本当にありがとうございました!
原先生とパチリ。
以下、3年生の筒井萌さんのレポートです▽
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横山裕一さんといえば、私にはベビーブームの印象が最も強くあります。
あのヒヨコのようなキャラクター。表情のない個性的すぎるキャラクターたち。
擬音語や擬態語の強さ。また横山さんの作品全般に言える事だが完全には理解できない(あるいは理解する必要のない?術のない?)ストーリーやコマの連なり、等。
初めて手に取った時、あれは高校生の時だったがその瞬間の記憶は今でも鮮明に思い出せます。
"カッコイイ"
何が、ということでもなくて、(なんだか大げさのようだが)本能的に一瞬で引き込まれました。
今回の横山さんの展示、ワークショップ、トークショー、またその後の飲み会を経て、私の中で横山裕一さんという人の作るもの、またその人間に対する"カッコイイ"がより濃密なものになっているのを実感します。
横山さん自身の思う"カッコイイ"を基準にした選択、趣向や生活のエピソードがその口から語られる度、その内容に圧倒され、驚き、笑い、衝撃をうけ、新鮮な感動を覚えました。特に興味深いエピソードは横山さんの趣味である「遠足」です。ここでも"カッコイイ"が重要な役割を担っているのがわかります。横山さんの"カッコイイ"には必ず秩序があり、ルールがあり、自分自身がより快適でいられる環境が確保されています。乱れる事はほとんどない、それってとても"カッコイイ"。
例えば。横山さんの作品から、受け手がその計画し整えられた"カッコイイ"を多少なり感じ取っていることを仮定し想像したら、私はワクワクがとまりません。読者は、横山さんの思い描く"カッコイイ"の虜です。それもまた"カッコイイ"。